カッコよく！

  

空のメールが届いていた。

「ヒカリ」だ。

驚いた。あの一件があってから初めてのコンタクト。

でもなぜ空メールなのか・・。

しかも２本。そして着信１。

今日は身体のメンテナンス（アロマトリートメント）に行っていたので、

着信にきがつかなかった。

何か不安だった・・。

すぐにメールを送った。

３０分。返信なし。

今度は電話をかけてみた。

留守電。

１０分後もう一度かける・・。

留守電。本当に心配になってきた。

この間「ヒカリ」と交わした約束は今度連絡する時は「お互いの夢が叶った時」。

それではない事を私は察知していた。

こんなイヤな「勘」はなぜだか良く当たる。　

その後何度も何度もアタックしてみるが全て留守電。

とりあえず、留守電にメッセージを残してみた。

「いつでもいいから連絡して・・。」

私は明日４Ｆの作戦会議の日だ。

明日私のヒカリの４Ｆで夢に向かう「ヒカリ」の連絡を待つ・・・。  

向こう側の向こう側に私の「ヒカリ」がある。

とてもとても綺麗な夢の「ヒカリ」がね。
  

「ヒカリ」から久しぶりに連絡があった。

１時間あまり話をした。

話しの途中で何回私はため息を付き無言になったことだろう。

「ヒカリ」は語尾を強め私に反論する。

初めての「ヒカリ」とのバトルだ。

内容は明かせないがあまりに残念な告白だった。

そして私も彼に言うまいと思っていた告白をした。

「ヒカリ」はずっと無言だった・・。

うんと年下のギタリストにムキになる自分が馬鹿らしかった・・。

私はそれだけ「ヒカリ」のデビューに期待していた。

元カノの「志保」もそうだったに違いない。

あえて「志保」との行方についてはふれなかった。

私は気持ちをおさえ「ヒカリ」にまだチャンスはあると言った。

私も今ある事でとても頑張ってると伝えた。

突然の電話口でのソロギター。

電話口でのライブ・・。

なんの前触れもなくソロギターが始まった。

カッコ良かった。

「志保」にも聞かせたかった。

やっぱり「ヒカリ」はギタリストだ。

なんだか涙がでた。

理由なんてわからない。

「ヒカリ」も泣いていた。

行き場を失いかけた若い夢。

もう一度チャレンジする事を約束して電話を切った。

そして私たちはしばらくの間連絡を絶つことにした。

つぎはお互いの夢が叶ったときに・・。

頑張れ「ヒカリ」。私も頑張るから・・。  

今日「ヒカリ」からメールが届いていた。

０：００

メリークリスマス。

今「志保」送ってきたよ。

・（疑）別れたんじゃないの・・？

「志保」さぁ、変なんだよ・・。

夜中泣きながら酔っ払って電話してきたりさぁ、

今までどんな喧嘩してもこんなことなかったのに。

・・おぃ、クリスマスにそんなメール送って来るなっつーの。

私、今まで生きてきてクリスマスにこんなマイナスな話題をフラれた事はない。

・・自分で考えろっ！・・。

少し苛立った。

と、言うか余裕のない自分に気が付いた。

ホント今、自分に余裕がない。

やらなきゃいけない事がやまずみ。

クリスマスを楽しむ暇も無いのに・・。

「ヒカリ」をかまってる場合じゃない。

このメールにマジで苛立った。

でも「アンナ」にはクリスマスにメールしようと思ってたよ。

今、いろいろ言えるの「アンナ」しかいないんだよ。

・・なんてクリスマスなんだろう・・。

今、天気予報チェックしたら浜松も晴れなんだ。

？？？？？？。

「アンナ」今日は星がきれいだよ。

「空」見てみてよ。

窓を開けてみた。

ほんとに星がきれいだった。

「やるじゃん、小僧」

少しだけクリスマス気分になった。

余裕の無い自分を恥じた。

ダメねこんなちっちゃくっちゃ。

結局、最後は「ヒカリ」に、ポンと背中を叩かれた感じになった。

「ｍｅｒｒｙＸ’ｍａｓ」一言返信した。  

今朝「ヒカリ」からメールが入っていた。

５：１５

おはよう。今、歌舞伎町にいる。

「志保」の仕事終わりを待ってる。

まだ暗くて寒い。

実は半年前から「志保」一緒に住んでたんだよ。

なんとなく察しはついていた・・。

あれから「志保」と話し合ってやっぱ別れることにしたよ。

「志保」は全てに耐えられないんだってさ。

これ以上の時間のすれ違いも、これから先のことも・・。

結局、俺ら２人の先は見えてないと言うことさ。

しっかりしているものの「ヒカリ」は「女」に関しては：中坊：だ。

キャバ嬢の「志保」も、無職でギタリストの「ヒカリ」もホントはまっすぐで優しい。

朝の５：００から男を待たせる「志保」がうらやましい。（笑）

この後、「志保」と歌舞伎町の不動産屋に行って「志保」の部屋決めてくるよ。

「ヒカリ」と「志保」の間にはどうしようもない感情があるのがわかった。

「ヒカリ」にとって私は（男）友達。

それなのに私は（男）友達じゃなく（姉や保護者）の気持ちになってる事に鼻で笑った。

何か、COOLじゃないな。と。ま、見守って行きましょう、この先。

そう思い、メールを閉じた。  

「ヒカリ」の声が暗い。メールじゃなく電話が来た。

「お疲れさん」
「お疲れ。どーした？暗いじゃん。」

「志保と喧嘩した」「志保」とはキャバ嬢の彼女の事だ。

「なんで？」
「仕事やめたのが気に入らないらしい。」

「で、・・。」
「しばらく会いたくないって。」

「でもさぁ、モデルの仕事もやるんだぜ。」
「気に入らない理由がわからねぇーよ俺には・・。」

「ヒカリ」は苛立っていた。

でも、女の私には「志保」の気持ちが痛いほどわかる。
「ヒカリ」が確実に前に進んでいる事が怖いのだ。

自分の手の中から離れていく気がして。

私にも遠い昔そんな気持ちになったことがあった。
好きな人においていかれる気がして・・。

「なんで？」と言う「ヒカリ」の問いに私は「不安な女心」と言ってやった。

それだけあんたに惚れてるんだよと。
わかってやりなと。怖いのよ。「ヒカリ」が消えちゃいそうで。

「女心」も勉強しろと言ってやった。

でもなんだかうらやましかった。
若いキュンな２人が・・・。  

何でモデルなの？と言う私の質問に「ヒカリ」は度胸だめしと顔を売るため。
と、あっさり答えた。モデルの仕事は夜働いてた時のお客さんがもちかけた
話しらしい。

「ヒカリ」はルックスもいいからやってみなよと・・。
モデルの仕事は短期で３カ月間。ファッションイベント、雑誌、ショーモデル・・。
ギャラはまだ未定。今、「ヒカリ」は無職。なんとなく心配だった。

「大丈夫なの？」
「ん？何が？」
「その・・お金。」・・・。「空いてる時間働くから。」
「なんでもやるよ。ヤバい事意外。」（笑）
「自分ひとりだから何とか食えるし」

「ヒカリ」完全に前を向いていた。躊躇などない。

「そう。頑張りなよ。」「売れたら東京で私使ってよ。スタイリストで。」（笑）
「そのつもり」（笑）
「でもその前にやっぱライブのチケット送りたいな・・。」

「送ってよ・・。約束だね。」「しかも最前列じゃなきゃダメだね・・。」（笑）
「ぜいたく。」

「ヒカリ」の光は見えていた。「約束」はきっと果たしてくれると思った。
  

「ヒカリ」からメールがあった。渋谷にいた。
モデルのオーディションを受けていた。
今日中に結果がわかるから後でまたメールすると書いてあった。

なんでモデル？なのか疑問だった。
少しのイライラとドキドキで３時間あまりを過ごした。
コーヒーを飲もうとした時バックの中の着メロが響いた。

「ヒカリ」だ。

私はバックに飛びついた。メールを開く。

「合格」その後に時間あったら電話してと携番が書いてあった。

私は戸惑った。長い間メールでのコミュニケーションはあったが
「ヒカリ」の声を聞いた事がなかったからだ。

でも私はすぐに番号を押していた。
５回コール。「もしもし・・。」「もしもし・・。私。」
気恥ずかしくて次が出てこない。
「はじめましてじゃないか・・。（笑）」

「ヒカリ」の声は思ったより澄んでいた・・。
「声きれい」
「もっとかれてると思った？」
「ロッカーだからね。」
「俺ギターでボーカルじゃないから。」「歌へただし・・（笑）」
「マジ？歌下手なの？」
「へただよ。でもギター超うまいから（笑）」

こんなスローなやりとりの後１時間あまり話しが続いた。

この後「ヒカリ」の「光」がわかる・・。

続く・・  

グリーンの着信ランプが点滅していた。
メール着信アリだ・・。

きてた。「ヒカリ」・・。

急いでメールをひらく・・。

ごめん・・・。返信できなくて。今、新宿・・。
急ぎの用があるから、くわしい事はまたあらためてれんらくする。

私はすぐに返信した。

とりあえず明日空いてる時間にメールしてと・・。

「ヒカリ」になにがあったのかひどく気になっていた・・。

「ヒカリ」から返信アリ・・２１：５５・・。  

昼も人の波であふれ、夜になれば妖しく光る電飾と雑踏のうねり・・。
どこまでもきらびやかに光るネオンは夜の太陽だ・・。ネイザンロード。

香港九龍のメインストリート。私はここの街に魅せられてしまった。

いつも通うレストランの横の路地に古ぼけたマンションの入り口がある。
その入り口でいつも手作りのスリッパを売ってるおばぁさんがいる。
ほんの一畳ほどのスペースに色とりどりのスリッパを並べて・・

何度も足を運んでいる香港だがおばぁさんが休んでいたことは一度もな
かった。
けれど、今年の夏はじめてその場所におばぁさんもスリッパもなかった・・
昼に飲茶をしたあと気になって路地に向かった・・いない・・

夜もいきつけのレストランに向かう途中回り道をして路地に行く・・
いない・・　三日間通ったがおばぁさんは現れなかった・・。

ほどたってとうとう帰国の日になってしまった・・。
今日荷物の整理をしてたらおばぁさんから買った赤いスリッパが出てき
て思い出した。

おばぁさん元気にしてるだろうか・・　２０：０６「ヒカリ」からの返信ナシ  

後悔した・・・。すぐに「ヒカリ」返信しなかったことを・・。
連絡がつかない・・。昼からずっとアタックしているのに・・。
実は私の持っている情報は名前「ヒカリ」・・。２６歳。東京在住。
ギタリスト、メルアド。それだけだ。

「ヒカリ」も同じくだった・・・。

「ヒカリ」の夢の行方もとても気になった・・。

「ヒカリ」が何かを捨ててしまったんじゃないかと・・・。  

つい、さっきまで出かけていた。雨もあがっていて少し
雲も切れていた。風が冷たく、濡れたアスファルトの匂いがしてる。

ケータイのメール着信ランプが点滅していた。
歩きながらメールを開いた。

「ヒカリ」からだった・・・。

昨日の「ヒカリ」のアメリカ行きについての返事を返していなかったの
にメールが来た。

なんとなく不安がよぎる。

メールを読んだ。「ヒカリ」はＤＡＲＴＳ・ＢＡＲをやめていた・・。

また返事がかけないでいた・・・。  

近況報告・・。プライベート・・さほど変化なし・・。
仕事・・。なんだかんだ忙しいが、景気悪し・・。

おもしろネタ・・かなりアリ・・（笑）

ＴＯＰＳＥＣＲＥＴ・・在庫多数！（笑）

そして私は・・・・元気だよ＾＾・・。

こんな感じが「ヒカリ」とのたまのメールのやり取りだ。
ヒカリに言わせると男友達とメールしてるみたいだと言われた（笑）

「ヒカリ」に限らず男友達に「男友達」だと思われている。（笑）
数いる男友達のほとんどが私の事を「お前」って言うか、呼び捨てだ。

たまに自分がかわいそうになる・・・。

「ヒカリ」にその他報告したこと・・。

＊新しいＰＣを買ったこと。＊すっぽんスープを飲んでる事（笑）
（注意）スープはあくまで健康と美容のため・・・。

＊最近おしゃれして出かけたのにワイン飲みすぎておやじみたいに
おしぼりで顔ふいて付けまつげがとんでもないところについてた事。

こんな感じで「ヒカリ」に返信している。

笑っている「ヒカリ」の顔が目に浮かぶ。

この返信後めずらしくすぐに「ヒカリ」からメールが届いていた。

桜が咲くころギターの武者修行で渡米すると言う返信だった・・・。

なぜだか私はすぐに返信できないでいた・・・。  

ひょんなことから知り合いになったギタリストがいる。
名前は「ヒカリ」・・東京在住。２６歳・・。

夜ＤＡＲＴＳ・ＢＡＲで働いている。
つい最近メールが届いていた。

「久しぶり・・。元気？そっちは景気どお？」

ヒカリは店をまかされてるのでいつも売り上げを気にしている。
その日の売り上げでヒカリの給料も左右されるらしい。

東京も師走なのにあんまり・・らしい。
ヒカリいわく「場所」だと言う。

「いい場所は人が人を呼ぶ」と言う。そういう「場所」は仕掛けてるヤツがいる
という。たしかにそうかも知れない。

ヒカリは私よりうんと年下なのにとても世の中を見ている。いつも感心させられる。
そして、バンドでメジャーデビューする夢も捨ててはいない。

夜は遅くまで働き、酒も飲む。短い睡眠でスタジオに行く。
そんな生活がもう３年も続いてると言う。ヒカリいわく、
「俺は完全に長生きしないね（笑）」なんて笑っている。

そしてメールの最後に「でもなんかヤレる気がする！」と打ってあった。
きっとこの気持ちがヒカリの今を支えてるのだと思った。

支えるもの・・それはポジティブな自分の気持ち・・。
あとは家族や友達がサポートしてくれる・・。

今回もこのうんと年下の「おにぃちゃん」にガツンとやられた！

ヒカリがメジャーデビューしてＬＩＶＥをやるその日はチケットを買って、
最前列でソロギターを聴きに行きたい・・。

浜松の親衛隊で・・・「親衛隊・・］・・（激古）～！
年下のおにぃちやんには通じないかも・・・（爆笑）！！

（注意）親衛隊でもテカテカのはっぴにはちまきメガホンの姿ではありません。
これも若者には通じないかっ！（笑）